第56章 私は桜井瑞希にも及ばないのか

桜井瑞希はどこか茫然としていた。

「……出るべき? 出ないべき? こんなタイミングで、なんで私に電話なんか……まさか水野優奈っていうあのバカが、黒崎恒一に余計なこと言ったとか?」

「ないない。落ち着いて。水野優奈も、そこまで救いようのないバカじゃないでしょ。出なよ。もしかしたら本当に用があるのかも」

瑞希は逡巡の末、画面を滑らせて通話に出た。

できるだけ声を平らにする。

「黒崎社長、どうなさいました?」

「水野優奈の病気を治せるなら、条件は好きに言え」

いきなりそんなことを言われ、瑞希は自分でも一瞬、思考が止まった。

けれど態度だけは崩さない。

「申し訳ありません、黒崎社長...

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