第62章 お前、怪しいぞ

幸い、桜井瑞希はまだ落ち着いていた。とはいえ、黒崎恒一のような男がわざわざフロアまで足を運び、オフィスに現れるなど――さすがに意外すぎる。

周囲の同僚たちはざわつきっぱなしだった。

「黒崎社長だ……黒崎社長が、うちのオフィスに来るなんて」

「部長に用じゃないの?」

「部長」と聞いた瞬間、菅田晴海は思わずくるりと振り返り、黒崎恒一を見た。胸の奥が、期待でじんわり熱くなる。

しかも黒崎恒一が歩いてくる方向は、どう見ても菅田晴海のほうだ。周りがそう勘ぐるのも無理はない。

当の菅田晴海本人も、頬を染めて上目遣いに黒崎恒一を見つめる。心臓が喉までせり上がってきそうだった。

黒崎恒一が彼女...

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