第87章 桜井瑞希が非難の的になった

「いい。あとで外で適当に済ませる」

黒崎恒一は上着を手に取り、席を立った。水野優奈はその背中を見送る。胸の奥に沈むような喪失感が、じわじわと重くなる。

さっき彼はそれ以上、何も追及してこなかった。けれど――分かる。態度が、どこか違う。何がどう違うのかと問われれば、自分でもうまく言葉にできない。ただ、確かに冷えていた。

桜井瑞希……あの女のせいだ。

あいつがいなければ、自分がこんな目に遭うはずがない。そう思えば思うほど腹が立つ。とくに、さっき黒崎恒一が向けてきた視線。失望が滲んでいた。

あんな目で見られたことなんて、ほとんどない。まるで――罪人を取り調べるみたいに。

怒りが臨界点を...

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