第91章 罠にかけられた

店員が去ったあと、二人の間には気まずい沈黙が落ちた。

けれど桜井瑞希は、ふと思い出す。――この件が片づいたら、辞める。最初からそう決めていた。そうすれば、もう彼らの感情の渦に巻き込まれずに済む。

中村社長の前でその話を出したとき、半分は黒崎恒一との関係を示すためだった。だが残り半分は、本気だった。

「黒崎社長……今回の件は、もう終わりました。でも、私にも責任の一部はあります。ですから、会社を辞めます」

「いつ俺が、お前に責任を取れと言った?」

さっきまで機嫌が悪くなかった黒崎恒一の声が、急に冷えた。桜井瑞希の一言が、彼の神経を逆撫でしたのが分かる。

彼が桜井瑞希を呼び出し、一緒に...

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