第96章 また失敗した

その頃の桜井瑞希と黒崎恒一は、何をしていたのか。

二人はそれぞれ自分の休憩スペースにいて、互いに関わる気配すらない。

さっきまで「家族」を演じていたとは思えないほど。まるで本物の役者だ。カメラの前では仲睦まじく、カメラが止まれば他人――そんな距離。

実のところ、桜井瑞希の胸には引っかかっていることがあった。あの夜、自分たちの間に「してはいけないこと」が本当に起きたのかどうか。

それを知っているのは、彼女と黒崎恒一だけ。

本来なら、黒崎恒一とはこれ以上関わりたくない。だから、そんなことは忘れてしまうのが正解のはずだった。

けれど、大したことじゃないようでいて、決して小さくもない。ど...

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