第11章

北野紗良視点

警備員に連れられて北野彩香が屋敷の居間に入ってくると、そこはまるで法廷のようだった。暖炉の炎が私たちの顔に揺れる影を落とし、この対決をどこか儀式めいたものにしていた。

「達也、この女が私を誘拐したのよ!何週間も私になりすまして!」北野彩香の声は絶望にひび割れていた。

私は暖炉のそばで凍りついたように立ち尽くし、榎本達也がついに私の正体を見破るのを待っていた。詐欺師。犯罪者。夫の妻の人生を盗んだ女。

だが、榎本達也は落ち着き払ったまま座り、私の手を探り当てて握った。「何があったのかは、すべて分かっているよ、彩香さん」

知っている?でも、それならどうして……

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