第2章
北野紗良視点
私は、何かに憑りつかれたように玄関のドアを飛び出した。
M市の冷たい空気が顔を撫でたが、さっき目にした光景――三浦友也の手が北野彩香の肌に触れ、彼女の脚が彼に絡みつき、私のベッドの上で二人の体が一つになって動いていた光景を、何一つ消し去ることなどできなかった。
どうして?どうして二人とも、そんなことができるの?
足は当てもなく、人気のない通りを進んでいった。街のネオンが涙で滲んで見える。数人の夜更かしが通り過ぎていったが、まるで私のことなど見えていないようだった。
その時、首にかかったカルティエのネックレスの重みを感じた。
三浦友也の約束。それは美しく響く、卑劣な嘘だった。
震える手で留め具に触れる。
「離れて」と囁き、そして声を張り上げた。
「私から離れてよ!」
ネックレスはちぎれた。ダイヤモンドが、まるで流れ星が砕け散ったかのように歩道に散らばり、その一粒一粒が、粉々に砕かれた私の信頼の欠片だった。それらが側溝に転がり落ちていくのを、私はただ見つめていた。あるべき場所に収まっていくのを。
段ボールの家から、ホームレスの男性が顔を上げた。
「お嬢さん、大丈夫かい?」
「大丈夫です」言葉は灰のような味がした。「ええ、まったくもって大丈夫ですから」
午前二時の都市公園は危険な場所だ。失うものが何もない人間には、おあつらえ向きだった。
影の深い場所にあるベンチを見つけた。最初の雨粒が、冷たい涙のように顔を打った。
これが、私にふさわしい罰なのかもしれない。
喉から迸った嗚咽は、獣の叫びのように、誰もいない公園に響き渡った。
「信じてたのに、三浦友也」声がひび割れる。「二人とも、信じてたのに」
雨がドレスを、髪を、肌を濡らしていく。私は動かなかった。このまま雨に溺れてしまいたかった。
私は、誰にも愛される運命じゃなかったのかもしれない。
濡れた舗道を踏む足音に、私は顔を上げた。
雨の中、背の高い人影が近づいてくる――広い肩幅、軽やかな足取り、軽やかな運動着を着ていた。私に気づくと、彼は速度を落とした。
「あの」彼の声は低く、心配の色が滲んでいた。「そんなところにいたら、風邪になりますよ」
いくらかの尊厳を取り戻そうと、私は顔を拭った。
「お見知りおきもない私がお世話になるなんて...」
彼は数メートル離れた場所で立ち止まり、穏やかに両手を上げた。薄暗い光の中でも、彼の微笑みが見て取れた――温かく、純粋で、三浦友也の計算された魅力とはまるで違う。
「じゃあ、俺は榎本達也です」彼はジャケットを脱ぎながら肩をすくめた。「これで、もう他人じゃないですよね」
その言い方に、何の企みも、期待も感じさせないその響きに、私の心の壁にひびが入った。
二十四時間営業のコーヒーショップは、まるで別世界に足を踏み入れたようだった。温かい光、濃厚なコーヒーの香り、夜更かしする人々の柔らかなざわめき。
榎本達也は私を隅の席に案内し、断りもなく注文した。
「コーヒー二つ、熱めで。それと、彼女にひざ掛けをいただけますか?」
「ありがとうございます」
毛布を肩に巻きつけながら、私はどうにか言った。
「紗良さんは、何をしている人なんですか?」
彼は私の偽名を、何の疑問も持たずに受け入れていた。
「私は……」真実を口にするには、傷が生々しすぎた。「何かを創っています。誰も見てくれない、美しいものを」
彼の黒い瞳が、私の顔をじっと見つめる。
「時に、最も美しい創造物は影の中に隠れて、ふさわしい光が当たるのを待っているものですよ」
どうしてこの人は、こんなにも的確な言葉をかけてくれるんだろう?
数時間が、まるで数分のように過ぎていった。私たちはあらゆることについて話した――アート、哲学、M市のビルに朝日が当たる様子。榎本達也には、ここ何年も感じたことのなかった、『聞いてもらえている』という感覚にさせてくれる、不思議な聞き方をする人だった。
「あなたは、他の人には分からないことを理解してくれるんですね」自分の大胆さに驚きながら、私は言った。
「たぶん、君のように世界を見ている人を探していたからかもしれません」
首筋が熱くなる。
「私たち、会ったばかりですよ。私の本名さえ知らないのに」
彼は身を乗り出した。真剣で、けれど優しい眼差しで。
「名前なんてただの記号です。大事なのは、ここにあるものですよ」彼は自分の胸に手を当てた。「そして俺には、君が見える。紗良さん、本当の君が」
最後に誰かが私を見てくれたのはいつだっただろう――私を透かして見るのでも、私の向こう側を見るのでもなく、ただ、まっすぐに私自身を。
夜明けの光が窓から差し込む頃、榎本達也は腕時計に目をやった。
「これで終わりにしたくないんです、紗良さん」彼は紙に何かを書きつけた。「また、会ってもらえませんか?」
私はその数字を見つめた。心臓が激しく脈打っている。「私……まだ、準備が……」
「プレッシャーはかけません」彼は紙をテーブルの向こうから滑らせた。「準備ができたら、もしその気になったら、電話をください。待ちますから」
そのシンプルな言葉は、どんな大袈裟なロマンチックな仕草よりも、強く私の胸を打った。
北野宅は変わらないように見えた――威圧的で、冷たくて、完璧。でも、すべてが変わってしまっていた。
三浦友也は檻の中の獣のように、玄関の前を行ったり来たりしていた。私を見ると、彼の顔に安堵が広がった。
「紗良、よかった。頼むから聞いてくれ。昨日の夜は間違いだったんだ。酔っていたし、それに北野彩香が……」
私は歩みを止め、幼い頃から愛してきたこの男を見つめた。
「私より彼女を選んだ時も、酔っていたのかしら?」
「どういう意味だ?」
「つまりね、三浦友也。間違いの中には、その人の本性を暴くものもあるってことよ」
彼の口は、金魚のようにぱくぱくと開閉した。生まれて初めて、私は言葉を失った三浦友也を見た。
私は彼を通り過ぎてドアに向かった。手のひらの中では、榎本達也の電話番号が秘密のように熱を帯びていた。
『最初からあなたのものになんてならないものもあるのよ、可愛い妹』
北野彩香の言葉が記憶に蘇ったが、もうその棘は私を傷つけなかった。










