第2章

パソコンの前に戻ると、LINEグループの七〇二号室の月城からのメッセージが目に飛び込んできた。

「みんな心配せんでええよ、あそこは何ともないから。

私は眉をひそめた。

この口ぶりからして、七〇七号室の住人と話をしたのは明らかだ。

おかしい。話し声なんて一切聞こえなかった。仮に私が遠くにいて聞こえなかったとしても、話をしたのなら七〇七号室の住人は一度ドアを開けたはずだ。だが、私が聞いたドアが閉まる音は一度きり——月城は本当に自分の部屋に戻ったのだろうか?

グループにはすぐに返信があった。

七〇五号室の梶浦正雄が応じる。

「無事の確認が取れて何よりです。この台風ですし、皆さん外出は控えた方が賢明でしょう」

六〇二号室の星野和枝もそれに続く。

「もう遅いですし、みんな休みましょう。明日の町内会でまた話し合いましょうね」

五〇四号室の鹿島英樹がグループで返信していないことに、私は気づいた。

スマホを置こうとしたその時、個人チャットの通知音が鳴った。

鹿島からだった。

「葛城君、まだ起きてるでしょ? いつもこの時間まで夜更かししてるんだから、今日に限って寝てるわけない……グループのメッセージ、見た?」

私は一瞬ためらい、寝起きを装って返信することにした。

「あぁ、今ぼんやりと見たとこだよ。台風の音がうるさくてさ。問題は解決したみたいだな?」

鹿島がなぜ深夜に個人チャットを送ってきたのか、私には分からなかった。時々一緒にゲームをすることはあるが、そこまで親しいわけでもない。

警戒はしておかなければ。特に、彼がメイングループで送った、普段の彼とはまったく違うスタイルのあのメッセージを見た後では。

鹿島からの返信は早かった。

「葛城君、何かおかしいと思わない?」

その一言に、私の心臓がどくんと跳ねる。彼も何かに気づいたのか? 私は慎重に返した。

「具体的のどこが?」

「月城君だよ、君の隣の。彼が最後に送ったLINE、どうも彼らしくない気がするんだ。彼がメッセージを送る時、ちょっとした癖があるのに気づいてた?」

私は急いでLINEグループの履歴を遡った。月城隼人、あの薄茶色の髪をした若者は、現実の会話でもネットのチャットでも、いつも濃い大阪弁で話す。

それなのに、さっきのメッセージは……

「みんな心配せんでええよ、あそこは何ともないから。みんなも早う休んでな」

完全に標準語だ。大阪弁の痕跡が微塵もない。

この明らかな違いに、私は背筋がすっと冷たくなった。もし月城本人が送ったメッセージでないとしたら、誰が? 誰かが彼のスマホを使ったのか? それとも……

私は素早く鹿島に返信した。

「大阪弁のことか? 最後のメッセージは月城本人じゃないと疑ってるのか?」

鹿島からの返信を待つ数秒間、ドアの外から微かな物音が聞こえた。誰かが廊下を慎重に移動しているような音だ。その足音は極めて小さく、この深夜でなければ気づくことはほぼ不可能だろう。

私は息を殺し、ゆっくりとドアに近づき、そっとドアスコープに目を当てた。

心臓が止まりそうになった。

薄暗い非常灯の光の下、栗原源一が、まるで私が覗いていることを知っているかのように、まっすぐに私のドアスコープを見つめていた。彼の顔は紙のように真っ白で、その瞳は虚ろで深く、唇は微かに震え、何かを言いたげに動いている。

その瞬間、背筋から悪寒が駆け上り、全身の血が凍りつくのを感じた!

なぜ栗原源一がここに? 彼は七〇七号室にいるはずじゃなかったのか? それに、あの様子……あの生気のない目つきは……

私は思わず数歩後ずさり、足の力が抜けて、ほとんど立っていられなくなった。

あの虚ろな目がドアスコープを貫き、私の魂を直視しているかのようだ。なぜ栗原源一が私のドアの前に? なぜ私のドアスコープを睨みつけている?

今は絶対的な静寂を保たなければならない。私は息を止め、物音一つ立てないよう細心の注意を払った。彼が月城をどうしたのか、私に何をするつもりなのか、分かったものではない……。

私の思考は台風のように混乱していた。

ふと、一つの考えが脳裏をよぎった——ドアスコープは一方通行だ! 栗原源一が外でドアを見つめていたとしても、彼に私の姿は見えないはずだ。私が彼を観察していることを、彼は知らない。そうだろう?

その考えに少しだけ安堵したが、すぐさま、より深い悪寒が襲ってきた。ではなぜ彼は私のドアの前に立っていた? 偶然か、それとも私が観察していると知っていたのか? たとえ私が見えなくとも、あのドアを突き通すかのような視線は、依然として私をぞっとさせた。

勇気を振り絞り、私は再び慎重にドアに近づき、ドアスコープに目を押し当てた。

廊下には誰もいなかった。

栗原源一は、まるで最初からそこにいなかったかのように、音もなく姿を消していた。

安堵すべきなのか、それとももっと恐怖すべきなのか、自分でも分からなかった。理性的な思考は一時的に崩壊し、私はただ壁に寄りかかり、速まる呼吸と狂ったように脈打つ心臓を必死に落ち着かせようとした。

スマホの震動が私を現実に引き戻した。

鹿島からの新しいメッセージが表示されている。

「あれは月城君が送ったメッセージじゃなくて、七〇七号室の栗原さんが送ったんだと思う」

私が返信する間もなく、また一つメッセージがポップアップした。

「試しに月城君に電話してみようか?」

心臓が激しく跳ね上がり、私はすぐさま緊張しながら返信した。

「電話するな! まだかけてないよな?」

もし栗原源一が何かに気づいて私のドアの前に現れたのだとしたら……もし彼が月城のスマホを持っていて、私たちのやり取りを監視しているとしたら……鹿島の電話は、私たちが疑いを抱いていることを即座に彼に知らせてしまう!

私は辺りを見回し、自分の状況がいかに危険であるかを改めて認識した。この古い団地のドアの鍵は簡素で、薄っぺらい木製のドアは、本気になった人間の攻撃を防ぐことなど到底できない。台風が吹き荒れるこの夜、たとえ喉が張り裂けるほど叫んでも、誰にも聞こえはしないだろう。

私はスマホの画面を睨みつけ、指を無意識に震わせながら鹿島の返信を待った。

ついに、返信が来た。

「かけてないよ。どうしたの? 直接電話するのが本人かどうか確認するのに一番早いだろ?」

続けてもう一通。

「それにこんな時間でも彼はまだ起きてるはずだし、あの語尾もない変なメッセージが本人が送ったのかどうか確認できないと、今夜は気になって眠れないよ!」

私はわずかに安堵した。

幸い、鹿島はまだ電話をかけていなかった。藪をつついて蛇を出すような真似はしていない。だが、依然として油断はできなかった。

「警察に通報すべきだと思う」

私は返信した。

「さっきドアスコープで栗原さんが私のドアの前に立ってるのを見た。でも、すぐに消えたんだ。何もかもがおかしすぎる。警察に電話する」

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