第3章
リビングへと戻ったが、灯りをつける気にはなれなかった。
台風の強風が窓に打ちつけ、ガタガタと音を立てている。私はソファに身を縮こませ、携帯を固く握りしめながら、鹿島からの返信を待っていた。
暗闇の中、ある論理の穴が不意に私を襲った——もし栗原源一がさっき私の部屋の前に立っていたのだとしたら、彼は自分の部屋である七〇七号室には戻っていないはずだ。では、月城隼人がドアをノックした時、誰が応対したのか?誰が『皆さん、ご安心を』というメッセージを送ったのか?
心臓の鼓動が速くなる。
鹿島からのメッセージを思い返すと、そのロジックは意図的なくらいに明瞭で、普段のやり取りに見られる特徴が一切なかった。ゲームマニアである鹿島のメッセージには、スタンプやゲームネタが欠かせないはずなのに、今の彼の言葉遣いは異常なほど丁寧で、まるで……彼を模倣している誰かのようだった。
携帯が再び震えた。
画面には、鹿島が私、梶浦、星野を含む新しいLINEの小規模なグループを作成したことが表示された。
『皆さん、夜分にすみません。先ほど七〇一号室の葛城さんから、七〇七号室の栗原さんが彼の部屋の前に立っていたという、少々不穏な情報をいただきまして』
『え?どういうことですか?』
『ご安心ください、すでに警察には通報済みです。あとは警察の到着を待って処理してもらうだけです。皆さんにご連絡したのは、もし警察から何か聞かれた際に、今夜遭遇した状況についてご協力をお願いしたいと思ったからです』
『情報共有ありがとうございます。必要であれば協力します』
『私も協力します。ただ、このような台風の夜に、警察はいつ頃到着するのでしょうか……』
『間もなく到着するはずです。』
私はこれらのメッセージを睨みつけ、どこか違和感を覚えた。
鹿島の返信はあまりにも速すぎるし、通報するまでの時間も異常に短い。私が彼に通報すると伝えてから、彼が通報を終えるまで、わずか数分しか経っていない。
私は躊躇した。このグループで私の疑念を口にすべきかどうか。
もし鹿島が本当に誰かに成りすまされているのだとしたら、私が少しでも疑いを見せれば藪蛇になる。だが、もし本物の鹿島だとしたら、返信しないのも不自然だ。
『ありがとう、鹿島。警察が着いたら教えてくれ。』
およそ三十分後、グループが再び動き出した。
『警察が到着しました。今、状況を説明しているところです。後ほど、七〇一号室さんにも話を聞きに行くかもしれません』
私の指は画面の上で止まり、心臓が早鐘を打った。
このメッセージで、送り主が本物の鹿島ではないという確信がさらに強まった。
あまりにも真面目で、あまりにも堅苦しい。
『了解、協力する』
携帯を置き、眼前の状況について思考を巡らせる。七〇七号室で一体何が起きたのか?月城は今どこにいる?そして、本物の鹿島は?
数分後、グループにまた新たなメッセージが現れた。
『警察からは、夜も更けて他の住人に迷惑をかけられないので、その場で待機するよう言われました。七〇一号室さん、警察がそちらの部屋に向かっています』
警察が来た?
私はすぐさま玄関へ駆け寄り、そっとドアスコープに目を押し当てた。
廊下には相変わらず微弱な非常灯の光が差しているだけで、人影はない。
息を殺し、耳を澄ます。遠くからエレベーターの作動音が聞こえ、続いて革靴が床を踏む音が、はっきりと、そして規則正しく、徐々に近づいてきた。
だが、足音は一人分しかしない。
一つの考えが脳裏をよぎった——警察の職務規定では、二人以上の警察官で行動することが定められている。家庭内トラブルの処理であれパトロールであれ、必ず二人一組で行動するはずだ。
もし本当に警察が来たのなら、一人だけということはあり得ない。
足音は、私の部屋の前でぴたりと止まった。
息を詰め、ドアスコープに目を密着させる。
制服を着た巡査が一人、そこに立っていた。帽子を深く被っている。顔は見えないが、その制服は本格的に見え、腰には無線機やその他の装備が吊るされている。心臓が跳ね上がり、手のひらに汗が滲んだ。
彼はすぐにはドアをノックせず、まず携帯を取り出して電話をかけ始めた。
「もしもし、警察です。交番の住民登録システムで、東京XX団地七階、七〇七号室の世帯主、栗原源一さんの電話番号を調べていただけますか」
私は、ドアの向こうの男に聞こえやしないかと、必死に自分の呼吸音を抑えた。
「承知しました。ありがとうございます」
彼は電話を切ると、すぐさま別の番号にかけた。その姿勢がどこか硬質で、まるで何かの儀式を執り行うかのように直立していることに気づく。
「もしもし、栗原源一さんのお宅でしょうか。巡査の柴田です。赤ん坊の泣き声について通報がありまして……」
彼は一瞬言葉を止め、相手の話を聞いているようだった。
「お子さんが熱を出された?なるほど……どうぞお大事になさってください。お騒がせしました」
彼が電話を切った瞬間、私の心臓はほとんど止まりかけた——栗原源一が電話に出た?そんな馬鹿な。十分も経たないうちに、私は明明と、死人のように青白い顔で私の部屋の前に立っていた彼を見たというのに。
警官は再び携帯を取り出し、今度は声を潜めたため、何を言っているのかほとんど聞き取れなかった。話し終えると、彼は私の部屋のドアに向き直り、手を上げて三度ノックした。
「七〇一号室の方、いらっしゃいますか」
私は応じなかった。彼はもう一度、今度は少し声を張り上げて三度ノックした。
「中にいるのは分かっています。すぐにドアを開けてください」
喉が締め付けられ、返事をすべきか迷った。結局、私は口を開くことにした。
「警察の方ですか」
私は尋ねた。声が少し震えていた。
「はい、巡査の柴田です。七〇七号室の騒音問題について確認に来ました」
「身分証を提示していただけますか」
彼は手帳を取り出し、ドアスコープの前にかざした。警察手帳らしきものが見えたが、薄暗い照明の下では、それが本物かどうかまでは確認できなかった。
「開けなくても結構ですよ。深夜にお邪魔して、ご心配をおかけしたくありませんので」
彼は突然、態度を変えた。
「七〇七号室の栗原さん一家ですが、お子さんが高熱を出し、ご家族三人で病院へ向かわれたそうです」
私は眉をひそめた。赤ん坊の泣き声が止んだ後、栗原はLINEグループで、母親が起きて授乳したとメッセージを送っていた。熱が出たとは一言も触れていない。それに、私はさっき栗原が目の前に立っているのを確かに見たのだ。彼が同時に病院にいることなど、どうして可能だというのか?
