第100章 見失った

「その男、どんな見た目だったか覚えてる?」

篠原瑤は真剣な眼差しで梅ちゃんを見つめた。

梅ちゃんはしばらく考え込んだが、首を横に振った。

まったく覚えていなかった。あの時は蝋燭に火を点けるのに夢中で、お酒を運んできた人にはまったく注意を払っていなかったのだ。

これ以上は何も聞き出せそうにないと悟った篠原瑤は、それ以上尋ねるのをやめた。

午後の撮影は通常通り進められた。

終了間際、人だかりの中に見慣れた姿が現れ、ちょっとした騒ぎが起きた。

篠原瑤がその人物の方へ目をやると、唐沢霄だった。キャメルのコートを羽織り、ライトグレーのマフラーを巻いている。帽子もマスクも着けておらず、堂々と...

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