第118章 彼は結婚する

胎児に悪い?

子供はもういない。

渋谷奕がその子を望まなかったのだ。

久保湘子の両肩が微かに震え、目尻が赤くなり、悔しそうに涙をぽろぽろとこぼした。

篠原瑤は胸が締め付けられる思いで、彼女を腕の中に抱き寄せ、その肩や背中を軽く叩いた。「どうして泣いてるの?」

「子供、いなくなっちゃった……」

久保湘子の涙は止まらず、喉の奥から嗚咽が漏れた。

本当は、この子を産みたかったのだ。たとえ渋谷奕が望まなくても、自分一人で育ててでも、産みたかった。

しかし、渋谷奕がそこまで非情だとは思いもしなかった。彼が口にした言葉は酷いものだったが、理に適っていないわけでもなかった。

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