第119章 奥様は彼に心配をかけさせない

「書斎に来い」

渋谷奕が冷たく口を開いた。

「お聞きするけど、その方が結婚相手なの?」

久保湘子は彼の言葉を無視し、彼の隣にいる女を指差して鋭く問いただした。

「ああ」

長谷川美憂はフンと鼻を鳴らすと、渋谷奕の腕から手を放し、その白く細い腕を直接彼の腰に回した。小さな顔を男の胸にすり寄せ、久保湘子を流し目で見る。

渋谷奕は彼女を引き剥がし、眉をひそめた。「先に帰ってろ」

長谷川美憂はまたフンと鼻を鳴らす。「帰りたくない。あなたと一緒にいたいもん」

「片付けなきゃならないことがある」

「なら、あたしも付き合うわ」

「言うことを聞け」

渋谷奕は辛抱強く彼女をなだめる。

彼と長谷...

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