第257章

 残された紀保くんの母親は、一人で夫の怒りと向き合うことになった。

 彼女は思わず弁解する。

「どうして来たの? ちょうど子供を送って、これから野菜でも買って帰ろうとしてたところよ」

「そんな格好で子供を送り迎えするのか?」男は彼女を指差し、その目は怒りに燃えていた。「お前が馬鹿なのか、俺が馬鹿なのか? さっきの男は誰だ? 向こうはお前に目もくれていないのに、お前はまるで体ごと擦り寄っていきそうな勢いだったじゃないか。もういい、お前と無駄話をする気はない。さっさと離婚届を出しに行くぞ」

 こんな妻は、彼には手に負えなかった。

 もし望月琛が彼女に少しでも好意的な態度を見せていたなら...

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