第262章

「三千万!」

 相手はしきりに値を下げようとしてくる。

 前田南は無意識にそちらに目を向けたが、相手はマスクに黒い帽子という出で立ちで、顔立ちはまったく見えなかった。

「一億」

 第三者が札を上げた!

 この聞き覚えのある声……前田南が思わず視線を向けると、そこにいたのは望月琛だった!

 望月琛の登場は、前田南にとってまったくの予想外だった。

 それどころか次の瞬間、望月琛は彼女に向かって歩み寄りさえした。

 望月琛は彼女の隣に腰を下ろすと、その肩を抱き寄せて皆に向き直り、さらに手を挙げた。

「俺の妻が気に入ったものだ。いくらでも払う」

 望月琛のそれは、青天井入札の合図...

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