第264章

 やがて前田南が再び目を開けた。

 自分が部屋の中にいることに気づき、前田南はもう死んだものだと思った。

 意識を失う直前、前田南が感じたのはただ冷たい海水だけだったからだ。

 攫われた時、前田南はかなり薄着をしていたので、今ここにいることが余計に不思議に思えた。

「目が覚めたか?」

 その声に、前田南は顔を上げて目の前の人物を見つめた。

 見慣れたその顔立ちに、前田南は見間違えたのかと思った。

 斎藤維!

 彼に会うのはどれくらいぶりだろう?

 実に四年ぶりだ!

 前田南の視線に気づき、斎藤維は思わず笑みをこぼした。「そんなに不思議そうな顔をするなよ。本当の話、俺たちは...

ログインして続きを読む