第271章

ボスである伊藤奈々は、電話一本で最上階の個室を確保した。

彼女は個室で腰を下ろし、前田南を待っていた。

ほどなくして前田南もやって来て、個室のドアを開ける。伊藤奈々を目にしたその瞬間、前田南は危うく見分けがつかないところだった。

伊藤奈々の変わりようは、あまりにも大きかった。

思えば、二人が出会ったばかりの頃、伊藤奈々はとても明るくオーラのある女性だった。夫の浮気を知っても、自分を憐れんだり嘆いたりすることはなかった。

しかし今の伊藤奈々は、身につけているものは相変わらずブランド品だが、見るからに精気を失っているのがわかる。

「南、ここには私たち二人だけよ。堅苦しいことは抜きにし...

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