第70章

「まあいいか」

前田南は利害を考慮した末、やはり建築院に戻ることにした。

彼女も建築院の一員なのだから、今夜はここで過ごすしかない。

ところが翌日には山積みの仕事が待っていた。何とか忙しい業務をこなし、ようやく一息つけると思ったその時。

思いがけず、村上美咲がピンク色のワンピースを着て近づいてきた。

その色合いが彼女の愛らしさを引き立てている。美咲は前田南の腕に自分の腕を絡めると、親しげに声をかけた。

「南姉、お仕事終わったの?」

「一日中設計図を描いてて、もう死にそう。村上先生に会いに来たの?」

前田南は不思議そうに尋ねた。

「もちろん違うわよ!」

村上美咲は口をとがら...

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