第19章 噂

西野直人は、そのわずかな間を見逃さなかった。視線が、すっと冷える。

「……まだ何かあるのか」

「社内で……デザイン部のほうなんですが、若林さんについて、あまり良くない噂が出ていまして」

西野直人は眉をわずかに吊り上げると、背を向けてリビング脇の酒棚へ歩いた。慌てる様子もなくウイスキーを注ぎ、琥珀色の液体がクリスタルグラスの中でゆらりと揺れる。

棚にもたれ、ひと口だけ含む。気怠げな仕草は、ただ退屈な世間話を聞くときのそれだった。

「言ってみろ」

「同僚が……若林さんは囲われてるって。だから子どもを連れて出社できるし、来たばかりで顧問になれたんだって……」

「それで……今朝、何千万...

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