第39章 赤信号

神田結愛は彼の視線に射抜かれ、思わず息をのんだ。整った瞳いっぱいに浮かぶのは、信じられないという色。

雲城で「西野」と言えば絶対――その西野家の当主、西野直人。若林星奈の元夫で、彼女を生き地獄へ落としたと噂される男が、いま彼女を庇うように前へ出るなんて。

「神田さん」

西野直人の目が、怒りで歪んだ神田結愛の顔に落ちる。声は氷の欠片みたいに冷たい。

「若林星奈は、海から神田健斗さんを引き上げたばかりだ。命の恩人にその態度――それが神田家の躾ですか」

たった一言が、平手で顔を張られたように響いた。

神田結愛は唇を開く。反論しようとして、言葉が出ない。

命の恩人? 若林星奈が兄を? ...

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