第50章 弱点

「……ママ」

そのひと言は、錆びついた鈍い刃になって、彼女の胸のいちばん柔らかい場所へ容赦なく突き刺さった。

小山婆さんの話が、まざまざと蘇る。――三年前。父の会社は倒産し、父は重い病で亡くなった。母はたった一人で後始末をして、家まで抵当に入れて借金を片づけ、押しかけてきた職人たちにも残りの金を払った。それから海外へ出て、「こんな悲しい土地には二度と戻らない」と言い残したのだ。

探さなかったわけじゃない。けれど、あの日を境にぷつりと消息が途絶えた。

それは彼女の心に刺さった棘――優斗のことを除けば、いちばん深い棘だった。

山川心菜は、瞬く間に真っ青になった若林星奈の顔を見て、満足げ...

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