第57章 血まみれの男

若林星奈はデスクへ戻ると、何食わぬ顔でパソコンを立ち上げ、途中で途切れたデータの整理を再開した。記憶を頼りに、肝心なパラメータを一つずつ復元していく。

あのインターンを改めて呼びつけることもしない。騒ぎ立てもしない。

いまは一手一手が致命傷になりうる。下手に動けば、相手に尻尾を掴ませるだけだ。

裏で糸を引いているのは、山川心菜や小林岳みたいな間抜けが動かせる人間じゃない。

若林星奈は張り詰めたこめかみを指で押さえ、重たい息を吐いた。

山川心菜と小林岳の不正さえ突き止めれば、父の仇が取れて、優斗も守れる――そう信じていた。

だが事態は、想像以上に複雑だ。

焦るな。これは長期戦。

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