第64章 誰が獲物か

「聞くが……星奈が殴ったとき、手は傷ついてないか」

千葉大翔は慌てて頭を下げた。

「いえ。若林さんは見た限り無傷で、殴ったあとそのままデスクに戻りました。山川部長は……顔が腫れて、オフィスで泣いてます」

「放っておけ」

西野直人は氷みたいに言い捨て、執務机の前に腰を下ろした。指先が無意識に書類の端を撫でる。

「警備部に言え。今日の退勤後、二人つけろ。星奈が家に着くまで、目立たず守れ。山川心菜は追い詰められたら、平気で汚い手を使う」

「承知しました、西野社長」

千葉大翔は即答し、オフィスを出ていった。

西野直人は背もたれに沈み、目を閉じる。

脳裏に浮かぶのは、給湯室で見た若林...

ログインして続きを読む