第75章 彼女は現れるべきではなかった

新山梨乃の笑みが、すっと消えた。

若林星奈は語気を強めたわけでも、表情を変えたわけでもない。けれど、その一言がどれほど鋭い刃か――この場にいる全員が分かってしまった。

林田奈々が亡くなって間もない。なのに新山梨乃は、間髪入れずにその席を取りに来た。しかもギャラは四割引き。

それが何を意味するか。

彼女は最初から、この案件を狙っていたのだ。ただ、入り込む隙がなかった。

そして今、隙ができた。誰かが死んだから。

新山梨乃はアイスコーヒーのカップをぎゅっと握りしめる。爪がプラスチックの壁に食い込み、白い筋が一本走った。

胸が一度、大きく上下する。飲み込んだ息を押し戻し、彼女はもう一度...

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