第80章 高熱

若林星奈は、ひとりでずいぶん遠くまで歩いた。

磨き上げたハイヒールがかかとを削り、風がスカートの裾を脚に貼りつかせる。

寒い。

タクシーは拾わないまま、ただ車道沿いを前へ前へと進んだ。

頭の中には、さっき車内で交わした言葉が渦を巻いている。

後悔はない。

あの一言一言は、三年かけて飲み込んできたものを、ようやく吐き出しただけだ。

優斗が屋根裏部屋に放り込まれていた日々。食事も与えられず、オムツも替えられず、冬だというのに厚手の毛布すらなかった。

精神科病院でその話を聞いたとき、若林星奈は鉄の扉を体当たりで破りそうになった。

それなのに今さら、西野直人が「優斗は俺たちの息子だ...

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