第1048章

「はい」

向かいの男は、どう見ても藤原景治の秘書だった。

松本浄香にも察しがつく。商業圏のプロジェクトは藤原グループが主導し、ほかの企業はより大きな区画と利益を狙って入札に躍起になっている。どうやら木下家の提示した入札案が採用されたらしい。

松本浄香の正面に座っていた男は、彼女の反応を見て途端にさっきまでの尊大さを引っ込め、背筋を伸ばして座り直した。恭しく藤原景治をうかがいながら言う。

「藤原社長、当社の提案書に不備は一切ございません」

だが藤原景治は取り合わず、黙々と箸を進めるだけだった。

松本浄香は視線を落とし、口元をわずかに吊り上げると、そのまま立ち上がって藤原景治の卓へ向...

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