第128章

「それがどうした」

 坂田和也は背もたれに深く身を沈めた。その全身からは近寄りがたい冷ややかな気品が漂っている。端正で鋭利な顔立ちは淡々として感情を読ませず、底知れぬ冷淡さを湛えていた。

 松本桜はギリッと奥歯を噛み締めたが、そんな彼を前にしては、もはや罵りの言葉すら一文字も出てこなかった。

 全く、どこまでも厚顔無恥な男だ。

 小林絵里は松本桜の手をぎゅっと握りしめた。

「大丈夫、大丈夫だから……」

 それは桜を宥めるようでもあり、同時に自分自身に言い聞かせているようでもあった。

 彼女は坂田和也を真っ直ぐに見据えた。

「何か文句があるなら私に言って。桜を巻き込まないで...

ログインして続きを読む