第202章

彼女はここで立ち去ることだってできる。けれど、今回の提携を自分が台無しにしたとなれば、坂田和也が黙っているはずがない。きっと、あの手この手で嫌がらせをしてくる。

――何を言われるかまで、想像がつく。

小林絵里は一度、深く息を吸った。グラスを手に取り、歩み出て、薄く笑う。

「皆さまに、乾杯を」

彼女が一気に飲み干すと、すぐさま囃し立てる声が上がった。

「おお、酒強いね!」

部長はそれを横目に見ながら、隣の男と視線を交わす。次の瞬間、小林絵里の腕を取って席へ引き戻し、狙いすましたようにその男の隣へ座らせた。

その男こそ、今夜の主役だった。四十代前半。見た目はどこにでもいそうな顔立ち...

ログインして続きを読む