第251章

坂田和也が通話を切って振り返ると、東屋の中に小林絵里の姿がなかった。

 瞳の色がすっと沈む。彼は足早に東屋へ向かった。卓上には酒と菓子が並んでいるが、どれも手つかずのまま。

 そのまま小林絵りに電話をかける。――出ない。

 江口俐央が彼女に向けていた露骨な敵意が脳裏をよぎり、坂田和也は薄い唇をきゅっと結んだ。

 踵を返し、大股で邸宅へ向かう。

 だが玄関に差しかかったところで、江口俐央に行く手を塞がれた。

「和也お兄ちゃん、どこ行くの? ケーキ来たんだよ。お願いごとするの。ねえ、一緒に来て?」

 甘えた声で腕に絡みつく。

 坂田和也はその手をすっと外し、いっそう冷えた声で訊い...

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