第261章

あの二人の仲がうまくいっていないのなら――なら、俺にも……?

斉藤子玄は伏し目がちに、胸の奥で絡み合う思考をぐっと押し込めた。

スマホを取り出し、小林絵里にメッセージを送る。退院したことを伝える短い文面。

けれど、いくら待っても返事は来ない。

じわり、と視界の端に滲むような落胆が浮かんだ。

……

翡翠居。

坂田和也はやたらと忙しそうだった。

今回安町へ来た主目的は、こちらの現地視察。小林絵里に出くわしたのは、あくまで想定外――とはいえ、収穫がなかったわけでもない。

彼はテーブルに着き、書類に目を通しては捌いていく。整った顔立ちはどこか気品があり、それでいて冷たい。

一方の...

ログインして続きを読む