第265章

  坂田和也は、彼女の瞳に咲く晴れやかな笑みを見つめた。視線がわずかに沈み、短くうなずく。

「……いい」

  小林絵里はすぐに立ち上がった。

「話すなら酒でしょ。ないとつまんないじゃん」

  勢いよく酒を取りに行く背中を眺めながら、坂田和也の目がいっそう深くなる。酔った彼女の姿が脳裏をよぎり、止める気にはなれなかった。

  ほどなく小林絵里は、ビールをひと束抱えて戻ってきた。一本を彼の前に、一本を自分の前に置く。

  ぷしゅ、と開けてそのまま一口。小林絵里は思わず目を閉じた。

「これこれ! この味!」

  坂田和也もプルタブを起こし、口をつける。鋭く整った顔に、珍しく柔らかな...

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