第316章

小林絵里は冷たく言い放った。

「結構です」

そう言うが早いか、彼女は踵を返して立ち去る。

夏目夕子はその背中をじっと見送り、瞳の奥に陰るような冷たい光を滲ませた。

離婚するとまで言っていたくせに。いざ助けようとしても、受け取らない?

……ふん。

白々しい。

猫をかぶって。

あの女は、最初から坂田和也とずっと一緒にいるつもりだ。離婚なんて口にしたのも、和也を揺さぶるための演技に決まっている。

ずいぶん手が込んでるじゃない。

夏目夕子は視線を落とし、胸の内を丁寧に包み隠した。

今度こそ見せてもらう。坂田和也が、どうやってあの女と一緒に居続けるのかを。

……

小林絵里は屋...

ログインして続きを読む