第339章

坂田和也は高川寒彦を見やりながら言った。

「聞こえたか? 病院を出て左に曲がったところに、朝飯屋がある」

 小林絵里「……」

 高川寒彦は薄く笑う。

「坂田社長、小林絵里はあなたに話しかけてるみたいですよ」

 坂田和也は表情ひとつ変えない。

「みたいだな」

 小林絵里「……」

 口元がひくりと引きつる。絵里は高川寒彦へ視線を移した。

「寒彦さん、介護士さんに頼んでください。わたし、ちょっと外に出ますね」

 弁当箱を置き、坂田和也の手を取る。そのまま病室のドアを開け、外へ。

 坂田和也の視線は、彼女が自分の手を握っているところに吸い寄せられた。

 墨を落としたみたいに暗...

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