第363章

夏目夕子が坂田和也に会うなり、二年前の交通事故の話を持ち出したのを思い出す。恩を着せて見返りを求めるあの態度が、生理的に無理だった。

恩って、そういう使い方をするものか?

しかも、あの事故の真相だって、いまだにはっきりしていない。

二人はそのままジェト・バーへ向かった。

一階では夜の狂騒が渦巻いている。坂田和也は窓際の席に腰を下ろし、階下の賑わいを眺めながら、長く整った指でグラスをつまみ――一杯、また一杯と酒を流し込んだ。

古川修一は、その冷え切った横顔を見て、思わず舌を鳴らす。

「おいおい、なんでそんなヤケ酒みたいなことしてんだよ。何がそんなに不機嫌なんだ?」

坂田和也は一瞥...

ログインして続きを読む