第479章

小林絵里は、いまにも蹴り飛ばしてやりたい気分だった。

「放して!」

坂田和也は彼女を見下ろし、抱えたまま部屋の奥へ歩いていく。言葉は淡々としている。

「放さない。放したら、おまえ俺を殴るだろ」

小林絵里はぷりぷりと睨み返した。殴るかもしれない、じゃない。殴るに決まってる。

この男、本当に殴られに来てる。

家の中をぐるりと見て回っても、怪しい女の影はない。坂田和也の纏う冷たい気配が、ほんの少しだけ引っ込んだ。

そのまま彼は小林絵りを抱えたままキッチンへ向かい、ダイニングテーブルの料理に目を留めて眉を上げる。

彼女の腰をぎゅっとつねり、低い声で言った。

「飯作ってないって言った...

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