第523章

小林絵里は一瞬、表情が固まった。――まさか、あのときのことを忘れたわけじゃないよね?

「会って話しましょう」

坂田和也は身の内に走る、ひりつくような痛みを堪えたまま、声色だけは変えずに言った。

「いいよ」

そう言うなり、彼は通話を切る。すぐに小林絵りへメッセージを送りつけた。坂田邸に来い、と。

画面を見た小林絵りは眉を寄せる。

あの夜の出来事が、坂田邸そのものへの強い拒絶になっていた。けれど、ここまで来てしまえば行かないという選択肢もない。

坂田和也の声は冷たかった。苛立っているようで、待つ気などないと告げているみたいで。

呆れる。

――待てないのは、こっちだ。

芝居の話...

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