第530章

古川修一は必死に彼を押しとどめた。

「和也、やめろ。正気じゃない。まだ怪我してるだろ。それに小林絵里とはもう離婚したんだ。手放すって決めたなら、前を向けよ!」

古川修一には本当に理解できなかった。どうして坂田和也は、あそこまで小林絵里に執着するのか。

そもそも最初の頃、坂田和也は小林絵里を露骨に嫌っていたはずだ。彼女は、彼のいちばん見られたくない姿を知ってしまったから。

記憶を失い、言葉も出ず、まともに考えることすらできなかった——あの頃の彼を。

記憶を取り戻した坂田和也にとって、それは二度と思い出したくない過去だった。

だからこそ、あのときは頑なに小林絵里と離婚しようとした。

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