第537章

松本桜は苛立ちまぎれに、くしゃっと頭をかいた。

そのとき、スマホの着信音がまた鳴った。社長からだ。

松本桜は大きく息を吸い、通話を取る。「もしもし?」

「松本桜! 古川殿のほうから図面に不備があるってクレームだ。しかもお前が電話に出ないって言ってる。うちのスタジオを丸ごと潰す気か? 今すぐ古川殿に折り返——」

「辞めます」

松本桜は淡々と言った。

「……は? 今なんて? 辞める? 冗談だろ? お前、辞めたらどうなるか分かってるよな?」

「はい。全部、わたしが背負います」

相手はさらに言葉を失ったようだった。「正気か? この案件さえ終われば、報酬は相当——」

松本桜は口角をか...

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