第550章

松本桜はどうしても眠れなかった。ベッドに横たわっていても、胸の内は緊張と高揚でいっぱいだ。もうすぐY市を出る。あの古川修一という嫌な男から離れられる。そう思うだけで、身体の奥が熱くなる。

時間を数えるようにして、夜をやり過ごしていた。

「ドンドンドンッ!」

そのとき、玄関を叩くけたたましい音が響いた。

松本桜はびくりと跳ね、勢いよく起き上がって外をうかがう。隣で寝ていた女の子もはっと目を覚まし、「な、なに……?」と身を起こした。

嫌な予感が、背中を冷たく撫でた。まさか――見つかった?

こんなに早く?

桜はベッドを降りながら言う。

「わたしが見てくる。あなたたちは出てこないで」...

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