第583章

夏目奥さんの言葉を聞いて、夏目会長の険しかった顔つきもようやくいくらか和らいだ。

「まずは人をやって、夕子を連れ戻せ」

「はい」

夏目奥さんの瞳の奥に、ふっと笑みが走る。彼女はそのまま立ち上がり、部屋を後にした。

夏目思乃も続いて席を立つ。母娘は屋敷の外へ出て、墨を流したような夜の闇を見上げた。夏目奥さんは思乃の手をきゅっと握り、顔も見ずに、満ち足りた声で言う。

「思乃……ようやく、目の上のたんこぶを片づけてくれたのね」

夏目思乃はかすかに微笑んだ。

「勝手に自滅しただけよ。わたしのせいだなんて、言いがかりでしょう」

夏目奥さんは満足げにうなずくと、念を押すように尋ねた。

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