第586章

彼女の瞳に宿っていた光が、ふっと消えるのが見えた瞬間。坂田和也の顔色は、あからさまに曇った。

――俺と一緒にいるのが、そんなに苦痛か?

二人の間の空気が、さらにひやりと固まっていく。

「いつまで突っ立ってる。行くぞ」

坂田和也は低い声で言い捨てると、くるりと背を向けてドアを開けた。

小林絵里は黙ってその背中についていく。どこへ行くのか、何をするのか。そんなことを考える余裕すら、彼女にはなかった。

今日は天気がいい。窓を少し下ろすと、ひんやりした秋風が車内へすべり込み、小林絵里の胸の奥に張りついていた苛立ちを、ほんの少しだけ薄めてくれた。

けれど、それもほんの少し。

坂田和也が...

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