第611章

彼女は資料を開いてざっと目を通し、連絡先の姓が松本だと知った瞬間、眉がぴくりと跳ねた。

すぐにスマホを取り出し、その番号へ発信する。

見覚えのない番号だったせいか、なぜか胸の奥がすっと軽くなった。

「もしもし、こんにちは」

――けれど。

松本幸雄の聞き慣れた声が受話口から流れた途端、小林絵里の顔色がみるみる悪くなる。

「……なんで、あんたなの?」

松本幸雄も一瞬固まった。「えっ……こ、小林嬢? わたしに、どういったご用件でしょうか」

驚いたふりをしているが、実際は坂田和也がすぐ隣にいて、スマホはスピーカー通話のまま。

小林絵里は淡々と言った。「別荘の設計依頼が来たの。あなた...

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