第628章

小林絵里は部屋の隅に立ち、中央で人に囲まれている高川寒彦を見つめた。目尻には、ふっと笑みが宿る。

高川寒彦は皆に促されるまま願い事をして、ふっと息を吹きかけてロウソクの火を消した。わっと歓声が上がり、個室の照明がぱっと明るくなる。

高川寒彦はナイフを手にケーキを切り分ける。誰もが首を伸ばして見守るなか、小嶋未沙はとりわけ期待に満ちた顔で彼を見ていた。

いつもなら、一切れ目は自分にくれる。今年だって、きっと——。

ところが高川寒彦は皿を手に取ると、くるりと向きを変え、小林絵里の前まで歩いてきた。

「はい、君に」

涼やかな目元に笑みを含ませ、ケーキを差し出す。

小林絵里は思わず目を...

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