第635章

  彼女の声はひどく冷たく、必死に身をよじって触れられるのを拒んだ。

  だが坂田和也は構わず彼女の手首をつかみ、その手を目の前に持っていく。

「自分で嗅いでみろ。お前、もう臭い」

  小林絵里はぴたりと動きを止め、言われるままにくん、と嗅いだ。

  ――変な匂いなんて、しない。

  澄んだ瞳に冷たさが差す。絵里は彼をまっすぐ見据えた。

「言ったでしょう。いらないです。臭いなら臭いで、それはわたしの勝手です」

  あなたに関係ない。

  それでも坂田和也は手を止めず、勝手に濡れタオルで拭き始める。

「小林絵里。前みたいに抵抗するな。どうせ最後は同じ結果になる」

  絵里は...

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