第672章

小林絵里のまつげが、かすかに震えた。何も言わない。

松本桜は衝撃を受けていた。まさか坂田和也に、そんな過去があったなんて。

口を開きかけて、何か言おうとして――やめた。結局、黙り込む。

ただ、気遣うように小林絵里を見つめる。

どうするかを決めるのは、小林絵里自身だ。

空気が、しんと静まり返った。

どれくらい時間が経ったのか。救急処置室の扉が開き、坂田和也がストレッチャーで運び出されてきた。

古川修一が一歩前に出る。

「どうだ?」

小林絵里も立ち上がる。だが、立った瞬間ふらりと身体が揺れた。

松本桜がとっさに支え、転ばないように腕を取る。

医師は淡々と告げた。

「肋骨が...

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