第73章

離婚を切り出したのは彼の方なのに、ずっと引き延ばしているのもまた彼だった。

彼が何を考えているのか――以前なら気になっていたが、今はもうどうでもいい。

もし彼が私の望み通りに離婚してくれないなら、彼だって夏目夕子への責任を果たすことはできないはずだ。

よほど彼女をただの浮気相手として割り切るつもりなら別だが。

彼がそんなことをするはずがないと、絵里は思った。

何しろ彼にとって、夏目夕子はとても大切な存在なのだから。

小林絵里は自嘲気味にそう思い巡らせた。ふいに目頭が熱くなり、感情を堰き止めるように慌てて目を閉じた。

しばらくして、バタンとドアが閉まる音が響いた。

その瞬間、心...

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