第740章

「大丈夫」

 小林絵里が言った。「わたしが戻りさえすれば、また期日を入れてもらえます」

 斉藤子玄は複雑な目で彼女を見つめる。今はそれしか、やりようがなかった。

「少し外を歩いてきたいんです」

 小林絵りは続ける。「何か買ってくるもの、ありますか? ついでに持って帰ります」

 斉藤子玄は笑って首を振った。「いや、何もない。行くなら早めに――」

「はい」

 小林絵里はうなずいた。

 孤児院を出ると、そのまま車を走らせ、県城へ向かった。

 着くころにはすっかり日が落ちていた。路肩に停め、にぎやかな通りへ足を踏み入れる。

 ちょうど夕食どき。食べ歩きや外食を楽しむ人で、街はざわ...

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