第750章

藤原千惠は顔色を強張らせ、玄関をにらむ視線にいっそう警戒が滲んだ。

「……誰?」

だが、返事はない。

「ちょっと、いるの?」

藤原千惠はさらに二歩進み、扉の外へ声を張った。——それでも、沈黙。

どういうこと……?

人は……?

彼女が思い切ってドアを開けた、その瞬間。

影がすっと滑り込み、肩を押される形で部屋の奥へと押し戻された。バタン、と扉が閉まる。

「きゃっ!」

藤原千惠は悲鳴を上げて飛び退き、侵入者を怯えた目で睨みつけた。

男だ。帽子にマスク。だが入ってくるなり暴れるでもなく、ただ静かに帽子とマスクを外した。

「怖がるな。手は出さない。言っただろ。小林絵里をどうに...

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