第754章

「坂田和也……」

 小林絵里はその名を呟き、電話をかけた。

 斉藤子玄は彼女を見て、やれやれと首を振る。

 たぶん――本人ですら気づいていない。坂田和也に対して、もう最初みたいに必死で逃げてはいないのだと。

 絵里は感情のない人間じゃない。好意を向けられ、謝られ、許してほしいと懇願されて……揺らがないほうがおかしい。

 耳元で呼び出し音が鳴り続ける。ツー、ツー、ツー……その音を聞くうちに、小林絵りはむっとした。

 なんで出ないの?

 どこにいるの?

 どこへ行ったの?

 やがて、通話は自動で切れた。

「わたしの電話に出ないなら、もういらない……」絵里がぶつぶつ零し、ふらふ...

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