第764章

 彼は踵を返して奥へ歩き、寝室に戻るなりベッドにうつ伏せになった。頭の芯がぼんやりしているのか、覇気がまるでない。

 小林絵里は部屋を見回し、すぐに救急箱を探し始めた。

 数分あちこち漁って、ようやくテレビ台の脇で見つける。中から体温計を取り出し、そのまま寝室へ入った。

「まず体温、測ろうね」

 ベッドのそばに立ち、額に非接触の体温計を向ける。小さな表示に数字がぱっと浮かんだ。

 39度。

 ――これは完全に高熱だ。

 絵里は解熱剤を見つけ、コップに水を注ぎ、もう一度寝室へ戻った。

「坂田和也、薬飲んで」

 うつ伏せの男は、ぴくりともしない。

 絵里はコップと薬を脇に置き...

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