チャプター 6

サマー視点

キーランが私の隣に腰を下ろしてからきっかり三分後に物理の授業が始まり、私はもう、厄介なことになるとわかっていた。

トンプソン先生の声が、教室いっぱいに響く。先生はホワイトボードに「エフ=エムエー」と鋭く正確な線で書きつけた。「ニュートンの第二法則よ」と告げる。「力は質量かける加速度。簡単でしょう?」

簡単なわけがない。何ひとつ、簡単じゃない。

私は白紙のノートを見つめたまま、隣にいるキーランの存在を痛いほど意識していた――微動だにせず座る様子、洗剤の匂いと、冬の空気みたいに冷たい何かが混じった淡い香り、そして私との間にきっちり保たれた距離。私はまだ、彼の袖をつかんだときの鼓動の速さを引きずっている。あの嵐雲みたいな目で私を見て、嘲りなのか同情なのかを探るように覗き込んできた、その瞬間も。

周囲ではペン先が紙を擦る音が続いていた。トンプソン先生は式の導出を始め、流れるような筆致で板書が優美な曲線を描いていく。集中しよう、言われたことを書き留めようとするのに、記号がにじんで意味のない形に溶けてしまう。

前の人生で私は文系だった。文学、美術史、音楽理論――情熱が精密さの不足を補ってくれる科目ばかり。物理は、学ぶ気にもならなかった異国の言葉だった。

いまの私は、その中で溺れている。

横目でキーランを見る。彼はノートを取っていない。ただトンプソン先生を見ているだけで、表情は読み取れない。まるで、すでに知っている情報を頭の中で整理しているみたいに。

当然だ。彼は全部知っているに決まっている。天才――みんながそう言っていた。サウスボストン出身の物理の神童。奨学金と大会の賞金で引き抜かれてきた、と。

私はノートに視線を戻した。どうにか書いた頼りない走り書き。周りを埋めていく整然とした方程式に比べると、自分の字が子どもの落書きみたいに見えた。

ピンクのシャープペンが手の中でやけに重い。電卓が要る。私は電卓を忘れた――正確に言うなら、元のサマーが忘れたのだろう。私はまだ、十七歳に戻ったことにも、持ち物が変わっていることにも、慣れきれていなかった。

息をひとつ吸い、勇気をかき集める。そして少しだけキーランのほうへ身を寄せ、声を落とした。「あの……予備の電卓、持ってる?」

彼は動かなかった。顔も向けない。目はボードに固定されたままで、一瞬、聞こえていないのかと思った。けれど、次の瞬間、静かで平坦な声が返ってきた。「ない」

ひと言。丁寧ではあるけれど遠い。二度と会わない他人に話しかけるみたいに。

頬に熱が一気に集まった。私は身を引き、指先がペンを握る力を強める。そりゃそうだ。予備の電卓なんてあるはずがない。なんで持っていると思ったんだろう。きっと彼は、何もかもを一つずつ、慎重に、計算して使っている。

考えなしに頼んでしまった。お金持ちの女の子たちがよくやるみたいに――資源は無限で、誰もが余分を持っていて、分けてくれて当たり前だと決めつけるみたいに。

馬鹿だ。ほんとに、馬鹿。

私は必死にボードへ意識を戻し、理解できない式を写そうとした。だが耳の奥が熱くなり、首筋へじわじわと恥ずかしさが広がっていくのがわかった。隣ではミアが猛烈な勢いで書き込み、字は小さく整っている。彼女はいつも、ノートを取るのが上手い。情報を噛み砕いて、飲み込める形に並べ替えるのが得意だった。

あのノートが必要だ。喉から手が出るほどに。

でもまずは、この授業をこれ以上恥をさらさずに乗り切らなきゃいけない。

トンプソン先生は授業を進め、より複雑な問題に入っていく。私は追いかけようとするが、完全に迷子だった。数字が紙の上を泳ぎ、どうやっても意味を結ばない。

シャープペンが机から転がり落ちた。

落ちていくのを見つめる。床で一度弾み、それからキーランの椅子の下へころころと転がっていった。最悪。ほんと、最悪。

私は一瞬ためらい、それから拾おうと身を屈めた。けれどキーランのほうが速かった。滑らかな動作でさっと身を屈め、長い指がピンクのシャープペンをつかむ。起き上がったとき、彼はさっきより近かった――目の下の濃い影も、顎に沿った薄い無精ひげも、教室の蛍光灯の下で瞳孔がわずかに開くのも、はっきり見えるほどに。

彼はペンを差し出した。私が受け取るとき、指先がかすった――彼の肌は、私が彼に結びつけてしまう冷たさに反して温かく、どこかざらりとしていた。前の人生で触れたことがあるような、硬いまめの感触。

「ありがとう」私は息のように言った。

「授業に集中しろ」彼は小さく言い、灰色の目が一瞬だけ私を捉えたかと思うと、すぐに滑るように逸れていった。

意地悪ではない。けれど……遠い。私たちの間に線を引いて、これは友だちの始まりなんかじゃないと、はっきり示しているみたいに。

私はシャープペンを握りしめ、胸の奥で心臓が複雑な動きをするのを感じた。前の人生の私は、彼に気づきもしなかった。背景の雑音以上のものとして見たことがない。奨学金で来ている、どうでもいい生徒。そういう存在だと思っていた。

もう、彼のことが気になって仕方なかった。いつも衝撃に備えているみたいに、身のこなしがひどく慎重なところ。傷んだ手を教科書に添えるように、守るみたいに丸めているところ。まるで自分だけの別の現実に住んでいるみたいに、触れられず、ひとりでいるところ。

その距離を越えて手を伸ばしたかった。あなたは大切な人だって、見ているって、伝えたかった。私がしてしまったこと、そしてしなかったこと、そのすべてを謝りたかった。

でも、どうすればいいのかわからない。物理の授業一回で、十年分の無関心を埋める方法なんて。

だから私はノートに視線を戻した。意味不明な走り書きの山に。次の四十分を生き延びることだけに集中しようとした。

―――

トンプソン先生が黒板に別の問題を書いているあいだに、私はノートの端をちぎった。ピンクのジェルペンを握り、急いで殴り書きする。『ねえ!物理のノート貸してくれない?運動量が全然わかんない……(泣)』

それを折りたたみ、ミアの腕を軽くつついて、彼女がこちらを見るなり机の上へすべらせた。

ミアは机の下でそれを開き、読み、それから何かを書き足した。紙切れが戻ってきたので、私はキアランの視界から外すように角度をつけて開く。

『いいよ!月曜までに整理しとく。でもさ……彼と一緒に座って大丈夫?前科あるって聞いたけど……』

胸がきゅっと縮む。横目でキアランを見ると、彼はワークシートに身をかがめ、完全に集中していた。

頭が追いつく前に手が動いていた。私は書き返す。『ゴミみたいに扱われるより、彼はもっとまともに扱われるべきだよ。それに……近くで見ると、実はすごくかっこいい』

私はそれを渡した。ミアは読んだ瞬間、目を見開く。もう一度キアランを見た。今度はさっきより慎重に、横顔を観察するみたいに――顎の鋭い線、額にかかる黒い髪――それから何かを書き、紙をこちらへ返してくる。

『前に会ったことあるの?なんか……彼に対して違う感じする』

その問いを見つめ、喉が締まった。どう説明すればいいの?彼と結婚していたこと?彼が私の命を救って死んだこと?冷え切った愛のない結婚を二年も続けながら、私は彼を理解しないままだったこと?そして今、身に余る二度目の機会をもらっていること?

『ないよ。ただ……ちゃんと向き合ってみるだけ』

丁寧に書いた。字が妙にきちんとしてしまう。私は紙を折り、ミアのほうへすべらせた。

そのとき、視界の端でキアランの手が途中で止まるのが見えた。鉛筆を握る力が強くなる。そして、彼の角度ならそのメモが見えてしまうのだと、遅れて理解して背筋が冷えた。全部ではないにしても――十分に。

『ちゃんと向き合ってみるだけ』

その言葉が、意図しない重みを持って私たちのあいだに漂った。上から目線に聞こえる。まるで私が慈悲深い姫君で、農民に施しを与えているみたいに。

メモを奪い返して、説明したかった。でもミアはもう読んで、感心したようにうなずいている。瞬間は過ぎ去ってしまった。

キアランの表情は変わらない。ただ書き続ける。左手が同じ慎重で制御された筆致のまま、紙の上を進む。けれど肩の緊張が見えた。顎が、ほんのわずかに強張るのも。

見られた。そして彼は、彼なりの結論を出した。

私は両の手のひらを机にぴたりと押しつけ、説明したい衝動に耐えた。けれど、何を言えばいい?「見下してるわけじゃない、ほんとに。ただ、あなたが私のせいで死ぬ未来を直したいだけ」なんて。

―――

第一章 キアラン視点

『ちゃんと向き合ってみるだけ』

その言葉が頭の中で反響しつづける。教科書を見つめたまま、左手は鉛筆を木に跡が残るほど強く握りしめていた。

見るべきじゃなかった。視線を泳がせて、ハートだらけの、女の子っぽい文字で埋まったピンクの紙切れに目を向けるべきじゃなかった。だが見てしまった。そして、もう見なかったことにはできない。

サマー・ヘイズが、俺に「チャンス」をくれるらしい。

なんて気前がいいんだよ。

表情は無に保ち、呼吸も整える。けれど内側では、この二十四時間の細部をひとつ残らず並べ、袖をつかんで「隣に座れ」と言い張ったあの女が何者なのか、理解しようとしていた。

昨夜、彼女はサウス・ボストンの食堂の外で酔っぱらってふらつき、金持ちの友だちと一緒にくすくす笑っていた。そのうちのひとりが俺のチップ皿をひっくり返したのを、俺は見ていた。彼女は俺の金を踏んだ――文字どおり、値の張る靴で踏みつけた――それでも、俺がそこにいることすら気づかなかった。

「急げ、クロス!」鉄板の向こうからトニーが怒鳴った。「一晩中待ってられるかよ」

俺はその汚い床にひざをつき、使えるほうの手で濡れた札を一枚ずつはがしていた。そのあいだに、あいつらは高い香水の匂いと無責任な笑い声を残して、戸口の向こうへ消えていった。

覚えていない。そりゃそうだ。

でも今日は、俺の袖をつかんだ。隣に座れと押し通した。俺が見ているのに気づくと、頬を赤くした。

本当に覚えていないのかもしれない。あるいは――

その考えを押しやったが、鉛筆を握る力は少しだけ緩んだ。

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